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Explorer's Voice 〜先人の知恵〜
Vol.02
株式会社大地
音田 誠二 さん
2
営業会議を聞いて
「上手く引き継げたな」と
2.営業会議を聞いて「上手く引き継げたな」と
お金への執着はめちゃくちゃあった
創業が1988(昭和63)年です。
大学卒業後は、いわゆる「近江商人」の商社で営業職になりました。約束手形は何があろうと落とす、金融的なテクニックで不履行にするなどという真似はしない、といった金銭感覚を叩き込んでもらいました。
そして淡路に帰ってきて建設会社の営業。当時はバブル経済の時代。しばらくして独立したいと周囲に漏らしたら、みんなが仕事をお世話してくれました。正直言って「こんな簡単でいいの?」と。その後バブル崩壊、阪神・淡路大震災があって大変でしたけど。
社名を「大地」にしたのは、当時水泳で鈴木大地さんが活躍していた、といった軽い気持ちです。

自分自身が不動産業向きの性格じゃないと思っていたので、若い頃から漠然と「55才くらいでリタイヤしよう」と思っていたんですが、実際には事業引継に想像より時間をかけて60才を過ぎてしまいました。現在65才。登記完了が2年前です。
というのも、現在の社長である住谷さんを含む3名を役員に引き立て、週一回「役員会」と銘打って話をしながら、現在会社で起きていることを理解してもらいました。経営者としての考え方や方針を少しずつ理解してもらう。決済印を渡して、お金の流れの全体像をつかんでもらう。そんなことをしていたら時間が経ってしまったわけです。

最初は向こうも終始受け身です。
おそらく僕のガバナンス下で雇われ社長になるのかな、くらいのイメージだったんでしょう。でも株式も渡してしまって「全てを任せたぞ」となった時点で「雇われじゃないんだ、自分の会社になるんだ」と理解したと思います。』会社は従業員一同、みんなで運命共同体です。だからみんなのモチベーションを高く保つのが重要です。小さな会社だったら、経営とオーナーは分けない方がいいというのが持論です。
ご家族、特に金融機関につとめておられる
長男に譲ろうという気はなかったんですか?
そもそも不動産業は不安定だという自分の考えが根底にあります。
株式会社大地は、小さいですけど僕が30年かけて育ててきたチーム。寿退社や期間限定の「修行」で来る人をのぞくと、離職者はほぼゼロ。もうお互いを知り尽くしている。
不動産業はそれぞれ各自のモチべーションがとても大切ですし、そこへ我が子を新参者として入れて、「こいつが次の社長だから、よろしく頼む」でみんながモチベーションを保って働けるとは思えません。表面上は賛同してくれるでしょうが、家業となったらみんなジレンマを抱えるでしょう。
となると、会社が「立場」で動いているだけなのか、みんなが意思疎通して動いているのかと頭を悩ませたと思います。

そんなわけですから、会社を子供に譲れば子供もきっと苦労するでしょうし、いつまでたっても心配で自分のストレスも解消されません(笑)。ずっとぎゃあぎゃあ言い続けて、スムーズな引き継ぎは難しかったと思います。
長男の学生時代、会社でアルバイトさせたこともあるんです。でも手前味噌なのは嫌だったので本人に聞いたら「継ぐ気はない」とはっきり言われた。そこで従業員にも「継ぐ気はないから、使うたって」と。

ですから子供に譲るかどうかはさほど悩まず、それよりも「自分自身の欲」との葛藤が大きかった。お金への執着はめちゃくちゃありましたよ。やっぱり手放すのはもったいないし、経営を分けるだけでオーナーとして残ろうかと考えました。
それに業績がいいタイミングですから、手放すのが惜しくなる。でも社員のモチベーションを考えたらオーナーとして居残ってはいけない。本当に何年も苦しみました(笑)
社名を「音田不動産」にでもしていたら、また違ったのかもしれません。
引退後もオーナーとして、
事業収益を受け取る仕組みにしなかったんですね。
みんなのモチベーションを考えると、いつまでもお金を吸い取られて、言うことを聞かないといけないのか、と思われるのは嫌でした。
不動産業はとにかく各個人のエネルギー頼りの業種。社長となる人も「自分のもの」と思えない会社で必死になるなんて無理だと思うんですよ。だったら、と思い切って役員3人に僕の全株式を分配しました。
食っていけるならそれで十分
今はやってないですが、かつては毎日「3時のおやつ」をしていました。まず社内配置が経営、不動産、総務と同じ横並びです。社長らしく扱ってもらってなかったな(笑)。
3時になると従業員一同アポイントを外しておいて、1時間から1時間半くらい、お中元・お歳暮なんかでいただいたお菓子を食べて雑談。お互い自由にいろんなことを話すので、何らかの情報が自然とインプットされるんです。

また大地はタイムカードがないんですよ。好きな時間に出勤して、好きなように休んでくれてかまいません。不動産業では常識といえるコミッションもゼロ。
地域を限定して淡路島の中だけで完結する、みたいな戦略もありません。好きなように橋をわたって、何かおいしいものでも食べてこいと言っていました。
「いやな客だな」と思えば断ってくれていい。目先の利益を追わない。創業時からこれは変わっていません。それでやっていけてますから。

人を上下で分けずフラットにしたのは、それが楽だと気づいたからです。叱責して追い立てたりせずに「失敗してもいい」という姿勢の方が、人は育つと分かりました。何より楽ですよ。
要は「使い捨てるけど、がんばれば報償をあげるよ」という多勢の逆を張れば上手く行くと思ったんです。
会社は人間形成の場です。大事なのは資金よりも人材。
今は何もできない素人でも、10年単位で付き合えば大体できます。特殊技能が必要な業種じゃないし、不動産部門は宅建(宅地建物取引士)、測量部門は測量士の免許さえ取れたら、あとは真面目にやっていれば通用します。
大事なのは聞き上手であること。僕自身は短気ですけど(笑)。
利益は上がらなくても、食っていけるなら十分だというのが信条です。僕自身が、そのときそのときの出会いと運で支えてもらったという自覚がありますから。
現在、社長に経営のことでアドバイスをされたりはしないですか?
ないですね。相談されたら答えますけど。会社をつぶそうと何をしようと勝手です。もちろん口出ししたくなる時もありますけど、それじゃ譲った意味がありません。やりたいようにやればいい。
僕が伝えた「経営に対する考え方」は守ってほしいと願っていますが、手放した以上、口出しをすれば自己否定になりますから。
一応、今も社内横並びの中で僕の机も置かせてもらっていて、毎朝の営業会議を聞きながら「うまく引き継げたな」と思っています。

ただ社長を引退してから、測量部門でドローン事業部を立ち上げてもらったりしています。ドローンがあればタイムリーな平面図が撮れて便利なんですけど、ぼったくり業者がいたので「1回3000円でいいですよ」と始めました。だましはいけません。目的は費用の標準化です。そして最新機器への興味(笑)。
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