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Explorer's Voice 〜先人の知恵〜
Vol.01
末松 大幸 さん
株式会社バーテック
末松 大幸 さん
事業承継インタビューの第1回は、18才で父より受け継いだブラシ販売会社を58才で長男に譲り、現在は新たにコーチング事業を展開されている末松大幸さんです。当初は現場仕事の職人さんを相手に価格で勝負していた会社を、Burr(やっかいなもの)をTechnology(技術)で解決する課題解決カンパニー「バーテック」へと変えて事業拡大しただけでなく、現在は「働きがいのある会社」4年連続ベストカンパニーに選出されていることも大きな話題となっています。そんなバーテックでの事業承継について、背景や思いなどを伺いました。
  • 本人プロフィール
    慶應義塾大学経済学部卒。株式会社バーテックを長男の仁彦氏に事業承継した後は、株式会社トップコーチングスタジアム代表取締役、一般社団法人FBAA(ファミリービジネスアドバイザー協会)執行役員。

    また日本刷子商工業協同組合理事長、大阪淀川ロータリークラブ2016~2017年度会長、財)生涯学習開発財団認定コーチなどを歴任。
  • 会社プロフィール
    株式会社バーテック
    (BURRTEC.CO.LTD)

    〒534-0027 
    大阪市都島区中野町1丁目4番12号
    https://www.burrtec.co.jp/

    1943(昭和18)年10月10日創業、1962(昭和37)年7月1日設立。事業内容は工業用特殊ブラシ・衛生管理ブラシ及び防虫防鼠シールブラシの設計開発・製造・販売。2018〜2021年「働きがいのある会社」ランキングの従業員25-99人部門で4年連続ベストカンパニーに選出。日本次世代企業普及機構「ホワイト企業アワード」にて企業理念共有部門受賞。健康経営優良法人2020(中小規模法人部門)認定。
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もっともっと世界が
広がる期待がある
1.もっともっと世界が広がる期待がある
2008年に社長を退任された際、
同時に株式会社トップコーチングスタジアムを起業されました。
どのような目論見だったんでしょうか?
私が父親から会社を継いだのが18才の時で、58才になった2008年に社長職を長男に譲りました。「これからは好きなことだけをやろう」と晴れやかな気持ちでした。好きなことと言っても、世のため、人のためになる意義のあること。もちろん見返りがあれば嬉しいですけど、世間のお役に立てたら、まわりまわって自分たちのためになるという思いです。

事業を譲る側としては、会社とは別のところに楽しめるものを見つけないと難しいと思うんですよ。個人的には「出口戦略」と呼んでいます。どの時期にどこまで譲って、どうやって上手くフェードアウトしていくか。
私の場合は一挙に全て譲りました。ファミリー企業の経営者って、全て自分で自由にできるからこそ、かえって自分をコントロールしにくいんです。だから次に自分が熱中できる舞台を用意する。自分の場合は、それがコーチングでした。

コーチングと出会うきっかけは、1990年代にワンマン経営から抜け出そうとコンサルタントを招いてISOを取得しようとしたことに遡ります。毎月コンサルタントに数十万円も支払って、7年かけたのに取得できない。恥をしのんで「もうこれ以上払えないんです」と相談したところ、コーチングという手法を教わりました。
もう藁にもすがる思いでコーチングを導入したら、社内のコミュニケーションや関係性ががらりと変わり、全てが上手く回り始めてISOもすんなり取得できた。その経験が現在に至る最大のこやしです。
会社は一定以上の規模になると経営者ひとりでできることが減り、社内の人間関係が悪いと失敗します。逆に関係が良いと、会社の器全体が大きくなります。それを痛感させられました。

そんな実体験を活かす道として、トップコーチングスタジアムを起業しました。
事業承継が上手く行かないと悩む中小企業は、日本全国にたくさんおられるはず。ただ「事業承継のコーチングはやめた方がいい」ともアドバイスされましたけどね。「光と闇があるから」って。
特にファミリー企業の事業承継って、みんな理と情の板挟みで悩むんですよ。頭のいい人ほど難しい気もします。

今、大阪産業局にある「大阪府よろず支援拠点」でコーディネーターもしています。そちらから事業承継の相談にお越しになる方も多い。ただ社長のお姉さんとか、承継当事者じゃない場合もあります。まわりが「後々大変なことになる」と危機感を抱いていても、当事者はなかなか来ません。来るのは本当にぎりぎりな状況になってからがほとんどで、「もうちょっと早くに考えてくれていたら」と思うことも多いですよ。
どうにもならない問題が起きてからだと、社長が80代、息子が60代なんてこともざらです。もう遅い、どうにもならない、なんてことは避けたいですよね。

事業承継では、まず個別の事情を汲んだ承継計画を作るべきです。でも当事者じゃないと魂のこもった現実的な計画書は作れません。
そんな時は相談やアドバイスはひとまず置いて、私が執行役員を務めているFBAA(ファミリービジネスアドバイザー協会)を勧めて「あなたも仲間になりませんか」と誘うことも多いですね。ロータリークラブにも長く籍を置いていますが、こちらも事業承継の疑似体験としてとても役に立つ場所だと思います。
ファミリー企業の事業承継は会社だけでなく、
ストレートに家族の問題にもなるわけですね
はい。承継のカギを握るのが女性ということも非常に多い。 平均寿命は女性の方が長いですから、たとえばお父さんだった社長が70代で亡くなる。遺産をお母さんと子供が継ぐ。お母さんは昔、夫と一緒に事業を頑張っていたけど、今は息子に会社を任せている。でも所有株式の関係で会長職にいたりする。
すると社長が「投資して新事業を興す」あるいは「連帯保証が必要」などと重要な決定を下そうとすると「危ないことをするな」と徹底的に抵抗してくる。もちろんお母さんご本人は会社と家族を心配していて、悪意はありません。
でも社長はたまったものじゃないから、母親に「もう全て譲ってくれ」と頼みますが、母からは「まだ社長になったばかりで何を言うか」と、既に70代に入ろうかという息子に言ったりするわけです。
下手をすると親子で訴訟合戦。俯瞰で見たらファミリー資産を弁護士だ何だと外部に流出させているのと同じで、もったいない話です。
そう思うと、経営者は自分の死後に家族が揉めないよう、あれこれ想定しないといけませんね。事業が成長していく上り坂は面白いですけど、後半の下り坂を乗り切るのも腕の見せ所です。
ご自身がバーテックから完全に離れて
「やることがなくなるかも」という不安はなかったですか?
毎日が日曜日、とはならなかったですね。本業となるトップコーチングスタジアム以外に、ロータリークラブで国際留学生のお世話をしたり、大阪府よろず支援拠点やFBAAで任されたこともあって、逆に全く暇がなくなりました。
家族には心配されますが、自分でやっていて気持ちがいいし、世のためになる仕事をしていると思っています。
承継後に何をすればいいのか不安だという人は、自分のテーマを決めればいいんです。たとえば新製品の開発なら、同じような立場の仲間を集めて他社の開発相談に乗ってあげるとか、開発に向けた交流に役立つ場所やグループを作るとか。
また引退して毎日家にいたら、奥さんが疲弊するという「あるある」がありますよね。だったら料理教室に行って、毎日の料理を趣味にする。さらに自分で料理教室を主宰してしまえば、他人にも喜んでもらえるでしょう。
そう思って私自身「親父の料理教室」を企画して、運営もしました。そういうことができる自由も余裕もあるのがオーナーのいいところですよ。

ずっとバーテック社長のまま今に至っていたとしても、いろいろやれたことはあったと思います。でも、もう2つ3つ、新しい世界を知った感がありますね。業界内だけでは視野が狭かったと思います。
ですから今は、もっといろんなことをしたら、もっと世界が広がって、もっと多様な人と付き合えるという期待があります。年齢を重ねると保守的になるものですけど、固定観念が崩されて変化に対応しなきゃと思う今は、本当に楽しいですよ。
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